BC州Whistler近くのかなりラフな岩場を走行中、50cmほどの深い溝に助席側のタイヤを強く当ててしまい、この結果、フロントアクスル (Dana 30) のハウジング部分を曲げてしまった。そしてその後、まさかアクスルが曲がっているとは知らず、家に帰る途中の高速走行の負荷によって、コントロールアームがアクスルに溶接されたブラケットが完全に折れ曲がってしまった。1ヶ月以上、保険屋やクルマ屋とのストレスフルなやり取りに痺れを切らし、自力で1から直すことを決意。以下はその記録。これまでの修理の中で最も長い工数と時間をかけたプロジェクトとなった。
折れたコントロールアームの溶接部分 |
ハウジングが曲がってコイルが湾曲している |
Day 0 - 9/11/2023
Facebookマーケットで掘り出し物の中古アクスルを見つけ、オーナーの家に夜、Dana 30アクスルを早速取りに行くことになった。VacouverからLangleyまで高速に乗って往復2時間ほど。早速現物を見せてもらう。ギア比4.88にさらにAussie製のlunchbox lockerがついている。なんと$400で取引成立。ありえない価格だ。。新品でギアの入ったアクスルを買おうとすると、$6,000以上は確実にする。本当にラッキーだ。2010年のモデルなのでそれなりに使い込まれているが、固着したサビを落とせばきれいになるだろう。オーナーは40インチのタイヤを履くためにより頑丈なJ8アクスルに交換したため、不要になったとのこと。いいジープオーナーだった。レンタカーに乗せて家まで帰る。重い!ちなみにこのアクスル、70か80キロ近くあり腰がおかしくなりそうだ。家に帰って中のディファレンシャルギアの状態を確認。金属片などもなく、全く問題なさそうだ。さてプロジェクト開始。
新しいデフの確認中 |
Day 1 - 9/12/2023
80キロのアクスルをなんとかジャックに乗せて作業開始。固着した砂、泥、サビをグラインダーと金属のワイヤーブラシで徹底的にとっていく。ものすごい量のサビが取れる。
Day 2 - 9/13/2023
引き続き錆取り作業。サビはほとんど取れた。
Day 3 - 9/14/2023
新しいアクスルには古いボールジョイントがついたままになっていた。正確には、前のオーナーは完全に固着したジョイントを外せず、無理やりボルトを切断し、ステアリングナックルを取り外していた。ボールジョイント用の専用工具で抜こうとするがびくともしない。長さ60cmくらいの大きなレンチを使ってもびくともしない。トルクが足りないか?Youtubeで何度も動画を見ては試すが、うまくいかない。潤滑スプレーをかけても全く効果なし。数時間粘ったところで、気が折れそうになる。これが外せないと次の段階には進めない・・・。気を取り直して、大きなハンマーとプロパンのバーナーをamazonで追加で購入。明日に持ち越し。
Day 4 - 9/15/2023
ボールジョイントの取り外し再挑戦。特殊工具をセットしたあと、限界までトルクを掛けて締める。そしてハンマーでアクスルのinner axle Cをとにかく叩きまくる。叩いては少し締めるを何度か繰り返すと遂にボールジョイント (Upper Ball Joint)が取れた。達成感がすごい。そのまま、残りの3箇所も同じような要領で外すことに成功。これは初めての交換だったからか?一つが外れるまで特殊工具の使い方が合っているのかさえ自信がなく、難しかった。ジョイントの接合部分のサビを徹底的に落とす。錆転換剤のキット (POR-15)で赤錆を転換してアクスルを水洗いし、乾かしてから黒の塗料でペイント。仕上がりはまずまずだ。新品のアクスルのようだ。秋晴れが続き作業が進んだ。
サビを取り除き綺麗になったアクスル |
Day 5 - 9/16/2023
デフのカバーをきれいに磨き、赤色にペイント。下回りは黒なので差し色が映える。新しいアクスルは、前のオーナーが使っていた左右のアクスルシャフトもついてきたが、ジョイント部分にガタが来ており、内部のグリスはほとんどなくなっていそうだった。これはいい機会だと考え、予備的なメンテナンスも含めてユニバーサルジョイント (U-Joint)の交換を行うことにした。ところがこのシャフトは比較的柔らかい金属でできており、ジョイントを外すときにハンマーを何度も当ててしまい(固着していた)、その結果、シャフトの耳の部分を曲げてしまった・・・初心者のミスだ。また、新しいSpicer製のUジョイントのサイズが0.5mmほど大きく、ハンマーで叩かないと入らないことも原因だった。これは結局、違うブランドMoogのUジョイントを買うことで解決した。
新品のようなアクスルになった |
Day 6 - 9/17/2023
新品のボールジョイントが届いたので、外したときと逆の方法で4つを取り付けていく。金属の穴に金属のジョイントを相当な力をかけてプレスしないといけない。この作業も簡単ではなかった。途中、何度か動画を見直し、やり方が正しいのかを確認しつつ、進めた。4時間くらいはかかってしまったと思う。しかしボールジョイントの交換は二度とやりたくないないなあ。本当にうんざりだ。次回必要ならクルマ屋に頼むかな。こうして1週間かけて、新しいアクスルの下準備が完全に整った。
やっとの思いで入ったボールジョイント |
Day 7 - 9/20/2023
ついにジープ側の作業開始!通常はアクスルにジャックを固定するが、今回はアクスル全体を外すので、左右のフレーム側にジャックを固定して、フロントのタイヤを外す。ここから、とにかくフロントアクスルにつながるすべてのパーツ類を外して行く作業だ。スキッドプレート、フロントドライブシャフト、タイロッド、ドラッグリンク、トラックバー、スウェイバーリンク、ステアリングスタビライザー、そしてブレーキローターとキャリパーを外す。アクスルは、この段階で、上下のコントロールアームのみで、クルマのフレームと繋がっている状態。作業を特に問題なく進んだ。
色々なパーツを外していく |
Day 8 - 9/21/2023
ブレーキが外れたので、次はホイールハブアッセンブリ (ハブとベアリングが一体化したパーツ)をアクスルシャフトから外そうとするが、完全に固着して動かない。潤滑スプレーをかけまくり、ハンマーでハブ部分を叩きまくる。そうすると数ミリの隙間が開いてきた。この隙間に潤滑スプレーを更にかけて、少しずつ外していくと最終的にアッセンブリを外すことに成功。ナックルとの接合部分の固着が激しく、フォーラムを読み漁っていると、交換した方がよいとのことなので、左右とも新品のパーツを発注。新しいスピードセンサーもついてくるもの。このホイールハブは、20万キロも動いたので十分な役目を果たしただろう。その後、左右のステアリングナックルを外し、アクスルシャフトを無事に抜き出すこともできた。助席側のシャフトは少し抜きづらかったが、これはアクスルハウジングが確実に曲がっていることの左証だろう。左右どちらのスプラインも欠けたりはしていなかった。
Day 9 - 9/23/2023
前日は雨がひどく作業できず。この日も夕飯を食べたあとからすぐに作業開始。ショックアブソーバーを外し、左右のコイルスプリングを外す。フロアージャッキを噛ませた後、前にアクスルを動かすことで、抜き出すことができた。そして、遂に古い曲がったアクスルを取り出すことに成功。
壊れたアクスルが姿をあらわした |
曲がって変形したアクスルが摘出されたとこ古いアクスルからバンプストップの延長ブラケットとトラックバーのブラケットを外し、新しいアクスルに取り付ける。トラックバーのブラケットにあるボルトの一つがどうしてもはまらないので、新しいアクスルにドリルで穴を開けて加工し対応。そして、新しいアクスルを運び込み、少しずつフロアージャッキで位置を調整し、アッパーコントロールアームをまず固定し、そのあと新しく買ったロワーも固定する。これでクルマとアクスルが仮止めされた。このあとに、タイロッド、ドラッグリンク、スウェイバーリンクを新しいアクスルに仮止めした。ショックはスプリングコンプレッサーを使い圧縮したあとにインストール。ここまで来ると完成にかなり近づいてきた実感がある。日付が変わる頃に作業終了。
新しいアクスルがインストールされたところ |
Day 10 - 9/24/2023
ボールジョイントおよびコントロールアームにグリスを注入。ブレーキパッドやキャリパー、ローターなどの砂やホコリなどをブラシできれいに掃除。スピードセンサーをホイールハブアッセンブリから外す。センサーがエンジンベイの手の非常に届きにくいところにあり、手こずる。結局、フェンダーを外すことで作業がしやすくなった。途中で雨が降ってきたが気合で作業を続行。ついでいつぞやの牛糞がたくさんこびりついたフェンダーをきれいに掃除。さて、前回失敗してしまったユニバーサルジョイントの交換に違うブランドのパーツで再チャレンジ。いとも簡単にできてしまった。一安心だ。これで安心してアクスルシャフトを新しいデフに入れられた。ホイールハブアッセンブリを更に取り付け、ブレーキパッドにグリスを塗り、ブレーキをすべて取り付ける。ハブやキャリパー、アクスルナットをトルク締め。ジャッキで車体を更に持ち上げ、タイヤを取り付ける。一旦バッテリーを外し、トラクションコントロール関係のエラーをリセットする。ジープが元通りになってきたぞ。ブレーキクリーナーで、デフの中をきれいにし、表面を改めて磨き、ガスケットシールを塗ってカバーはめる。新しいデフオイルを注入。ジャッキをおろし、そしてテスト走行だ!
ついにプロジェクトは完了へ・・・ |
家の周りを恐る恐る走ってみる。約一ヶ月ぶりのジープの運転だ。走るぞ・・・。大通りに出て、50-60km/hくらいで走ってみる。ステアリングはかなり硬く、すぐにセンターに戻ってこないが問題なく運転できる。またステアリングが少し不安定だが危険なほどではない。ボールジョイントが新品なので、慣らしが必要だろう。そのまま20キロくらいテスト走行し家に戻る。雨の中の作業を終え、日付は変わっていた。
プロジェクトのまとめ
日を追うごとにステアリングは少しずつ安定しており、90km/hでの高速走行もできるようになった。ただ、アライメント後日クルマ屋でしてもらおうかと思う。さて、今回のアクスル交換にかかったパーツ代は以下の通り。
- Dana 30 Complete Front Axle Assembly (4.88 gear ratio) x1: $400
- Moog 371 Axle Universal Joint x2: $78
- Ball Joint Set x1: $53
- Rubicon Express Adjustable Front Lower Control Arms x1: $236
- TeraFlex 9550 VSS Shock Absorbers (3-4 lifted) x4: $306
- Moog Wheel Hub Assembly x2: $295
アクスルの交換について、当初、クルマ屋が出した見積もりはなんと$7,900だった。しかもこの見積もりには、Uジョイントやホイールハブアッセンブリの交換費用などは含まれておらず、おそらく$9,000 (100万円以上?)は覚悟しないといけなかっただろう。これほどの大改造・大修理を工賃タダで、更に破格でアクスルを譲ってもらうことができて本当にラッキーだったとしか言いようがない。下準備に1週間、実際の取り付けに1週間ほどを要した。冬の雨季が本格的に始まる前に終えられてほんとうに良かった。工数がとても多く、初めての作業ばかりだったために、経験のある人ならもっと早く終えることができただろう。
北米では、Dana30からRubicon Dana 44またはFord Dana 60へのアップグレードはよく聞くアップグレードだ。できればより頑丈なDana 44にアップグレードできればよかったが叶わなかった。また溶接や構造的な弱点を補強するためにトラスをつけてアクスルを強化するパーツ (Axle Truss Kits)もあるが溶接が必要なので、今の環境では難しい。いつか挑戦したい。また、ディファレンシャルギアはフロント4:88になったが、リアは3.73のため、このままでは四駆走行ができない。四駆として使うためには、リングギアとピニオンギアを4.88へと変更する必要がある。素人にはとてもできないので、専門ショップで頼もうと思う。
プロジェクトを終えることで、ソリッドアクスルを採用する四駆の構造への理解が非常に深まり、時間をかければ自分で全て直せるだろうという自信にも繋がった。今後の大きな糧となるだろう。