夏の間、カナダBC州を冒険するキャンピングトリップを考えていた。BC州はとてつもなく広大だ。南北に直線で1,200 km、東西に1,050 kmもある。候補となっているエリアは、バンクーバーから北へ400 kmほどのLillooetさらに東の広大な辺境Cariboo、そして乾燥した大地の広がるOkanaganのエリア。最寄りの町まで高速で行き、その周辺に延々と広がるオフロードトレイルを走り、探索し、山や荒野でキャンプしながら見たこともない景色を見たい。
決められたキャンプ地にたどり着くことがだけ目的ではない。目的地のはっきりとした一般的な旅行とは少し違う。電波はもちろんガソリンや食料も手に入らない人里遠く離れた山にいくためには、とにかく念入りな準備が必要だ。山道専用の地図と衛星地図をにらめっこし、等高線からどれほどの傾斜があるエリアかを把握する。きれいな色の湖や滝にピンを立てておく。水や食料のほかに、燃料を計算したり、スペアタイヤ、ジャッキ、コンプレッサ、ー万が一クルマが壊れた場合に修理するための一通りの工具などキリがない。というか、クルマが壊れてもなんとかアテをつけて直せるだろうという自信が必要だ。山道を走り、キャンプ地を探すこと、未知のエリアを探索すること、作る料理を考えること、様々に起こる問題を解決しようとする行為の総体。これが病みつきになる。
旅の始まり
BC州の夏は山火事がひどく今年ものその例外ではなかった。そのため比較的マシだと思われたBC州東部の町MerritおよびKamloopsを目指し、ここから周辺の山々を転々と移動しようと考えた。Vancouver-Merritはおよそ300 kmなので休憩を入れて4時間ちょっとくらいだろうか。
金夜に出発し月曜に帰ってくる4日間の計画。朝、まずはいつものように大学に向かう。ジープのエンジンをかける。ウィーンと唸る音がする。なんだろう?前日まで問題がなかったのに。。。一気にテンションが下がる。いつもこうだ。誰かに行くなと言われている?
一度クルマを路肩に停めて、エンジンを見てみよう。少し吹かしてみると、回転数と完全に連動した音だとわかった。ベルトか?エンジン内部か?あるいはオルタネーターか。異音の場所は突き止められなかったが、ミーティングの時間が差し迫っていたので、様子を見つつとにかく大学まで行ってしまおう。すこし走るとバッテリーの警告灯がついたので、OBDポートにスキャナーを差し込み、ケータイでクルマの電圧をチェックしながら大学へ向けて残りを走る。11Vから10.9Vくらいだ。低い。オルタネーターがほぼ逝ってしまったんだろう。バッテリーが充電されていない。とにかく15kmほど離れた職場のある大学まで到着。
昼過ぎにLordco (パーツストア)に電話し、適合する型番のオルタネーターの在庫を確認。バスで店までピックアップし、大学の駐車場まで工具とオルタネーターを持っていき、さっそく新品に交換。20分くらいで完了。センサーを取り外すのに少し苦労。規定のトルクでボルトを締める。・・・エンジンをかけてみる。。。いつものエンジン音だ!電圧をすぐにチェック。13Vくらいだ。問題ないだろう。唸る音はやはりオルタネーターだった。もし解決しなければ次はバッテリーということになるが、おそらくまだ持つだろう。デンソーのオルタネーターは、20万キロ以上働いてくれた。これでキャンプに行けるぞ。自分の診断がバッチリ当たっていたこと、そしてまたクルマが動き出すことは嬉しい。
そして動き出す
7:40 pm 食料や衣類、工具を詰め込みようやく出発。VancouverからHighway 1でHopeへ向かう。道は空いている。100km/hくらいで巡航。
9:28 pm Merritとの中間地点Hopeに到着。マクドナルドでアイスコーヒーを買いしばし休憩。そしてHighway 5 (Coquihalla highway)に乗り換えMerrit方面へ。1年以上ぶりだ。Coquihalla hwyは北米の中でも最も危険なハイウェイと言われ、突然の猛吹雪ですごい数の事故が毎年の冬に起こる。トラックは横転し、一つのスリップが玉突き事故になる。Hopeから最初の30 kmくらいの区間で標高1,000 m以上登るため、非力なエンジンにはとてもきつい。ほとんど3速にシフトダウンして走る。燃費は最悪。V8エンジンが欲しくなる。こういう坂道は運転したくない。夏場、オーバーヒートしたクルマが路肩に止まっているのは風物詩。次は自分だとヒヤッとする。HopeからMerritまでの120 kmくらいの間に町らしい町はなく、給油や食料の調達などは必須。峠を何個も越えていく。
11:08 pm Merritに到着し給油。ひとまずHighway 5A (Princeton-Kamloops Hwy)から97C (Okanagan Connector)に入り40 kmほど東へ走りBluey Lakeへ向かう。ここはBC州のProvincial Parkの一部で、三連休の前日もあり結構人がいるようだ。トレイルは平凡で二駆で十分走れるレベル。Bluey Lakeの途中にテントを張れる場所を見つけ寝ることにする。
1:04 am 初めてルーフトップテントを試す夜。マットレスの寝心地が楽しみだなあ。20キロもある犬もクルマの屋根に取り付けたテントに頑張って運び込む。標高は1,068 m。15˚Cくらいか、少し肌寒い。ジープはよく走ってくれた。新品のオルタネーターも問題なし。きっと明日は素晴らしい色の湖を見ることができるだろう。テントの灯りを消す。気づくと眠りに落ちていた。
- 移動時間: 5時間24分
- 移動距離: 343 km
- 総移動距離: 343 km