2024年1月3日水曜日

ディファレンシャルギアの不調と修理

V6 3.8Lは車重に対して非力なエンジン(202 hp / 237 lb/ft)で、そこにさらに重くて大きな大径タイヤを履かせると登り坂などでの運転は楽しいものではない。もともとのギア比は、3.73:1なのでこれを4.88にre-gearすることで、パフォーマンスとくに1,500–2,000 rpm付近でのトルクが非常に高まり、33インチのMTタイヤでも、本当に運転しやすくなった。特に3速でも80 km/h以上を維持することがきつかった傾斜の厳しい長い高速の登り坂を、4速でも快適に運転できるようになった。オフでの走行時、きつい下り坂でとにかく減速してコントロールしたい場合にその威力を発揮した。4LOで1速に入れると、3–5 km/hくらいを維持でき、ブレーキングする必要がほぼない。これはより正確にクルマをコントロールし、さらにブレーキのオーバーヒートも防ぐことができる。

ところで、日本語だとこのギア比を交換することをファイナルダウンというそうですが、和製英語でしょうか。北米では一度も聞いたことがない。Re-gearかgear swapと普通は言います。日本語と英語で、名称が異なる部品もある。例えば、日本語でドライブシャフトはこちらでは、アクスルシャフト (Axle shaft)に対応しているし、こちらでのDrive shaftは日本だとプロペラシャフトというみたいですね。

フロントのデフは、夏に一式自分でアクスルを交換したときに前のオーナーが4.88:1のRing/Pinion GearとAussie製のLunch box lockerを取り付けていたので、リアのみショップでSpicer製のギアに交換してもらった。また、Limited Slip Differentialのクラッチが摩耗して壊れていたので、これも強化されたクラッチプレートに交換してもらった。ランチボックスロッカーは、日本ではほぼ馴染みがないものかと思うが、これはキャリアに入れた2つのプレートが4WDにしたときに左右のアクスルシャフトをロックすることで、トルクの分配を1:1にするというもの。オフロードでは非常に強力だ。2WDにおいては、プレートがラチェットのような動きをするため、プレート同士が擦れあって、左右の回転差を吸収する。このため、普通にストリートでも走行できる。というか、2WDではほとんどの状況でロッカーが入っていることを感じ取ることができない。

問題は右にステアリングを大きく切ったときのみ、2WDにおいても、ロックしてしまい、タイヤがガガガッと地面を擦ってしまうような振る舞いをしていることだった。おそらくだが、雪山で下に雪で隠れた深い穴のような場所にタイヤを当ててしまい、これによって、助席側のアクスルハウジングがわずかに曲がってしまい、二駆においても回転時にシャフトから余計なトルクがロッカーのプレートにかかり、カチャカチャと回転差を吸収すべきところをロックしてしまうような振る舞いをしているのだろう。このような可能性について、Jeepグループの一人から指摘され、とても納得した。仕組みについて、可能性について、詳しい人の意見はとても参考になった。この見立てが正しければ、Aussieロッカーを取り外し、オープン(左右のタイヤは別々に回転する)にすれば、暫定的には解決できそうだという。

キャリアは今のものを使えばよく、ロッカーを摘出して、かわりにスパイダーギアとサイドギアをスラストワッシャーとともにインストールすればよい。こう書くと非常に簡単だが、デフの中身をすべて取り出す必要があるため、タイヤ、ブレーキ、ベアリングアセンブリー、そしてアクスルシャフトを取り出すとようやくデフを取り出せる。

問題はSpider/Side gearsをどのようにして手に入れるか。新品がかなり高く400ドル以上する。地元のJeepグループに聞いてみると、家から80 kmくらい離れたMaple RidgeにDana 30のopen carrierを持っている人がいるとのことで、早速家に取りにいくことに。150ドル。話が盛り上がり一時間くらい雑談して帰宅。天気のいい週末に取り掛かろう。

デフを取り出す直前。タイロッドを外すと随分と作業がしやすくなった。

左右のベアリングキャップと古いシール

慣れているので、左右で20分づつくらい。ついでに、アクスルのシールもいいタイミングなので交換することに。左右に2本づつあるボルト、リングギアとキャリアの接点などにペンにマーキングしてもとの位置に完全に戻せるようにしておく。アクスルのシールには、専用工具があるととても便利で、amazonで事前に注文しておいた。念のため、ハウジングとの接点にはシリコンのRTVをつけておいた。これで漏れないはず。

中をきれいにして、新しいシールをプレスしたところ

ロッカーを取り出した。まずは中身のプレートをバラしていく。目立ったキズや欠けた部分などはなし。
Aussieロッカー

また、直接関係はないが、運転席側のUジョイントのキャップが外れてしまい、交換が必要だったので、これもやる。プレスで古いをジョイントを抜き出し、新しいUジョイントをインストール。固着しているので、結構な時間がかかってしまった。

アクスルのUジョイントの交換

もらってきたDana 30のキャリアから、Spider/Side gearsを取り出し、ロッカーを取り出したキャリアに組み込んでいく。Side gearのワッシャーは自分のものを使った。どうも貰ったキャリアに入ったワッシャーは僅かに厚い。クリアランスなども問題なく、きれいに組み込むことができた。ほっと一安心。規定にトルクで組み付けて、デフに戻す。そして逆順にすべてを取り付け直していく。

オープンキャリアとなったDana 30

テスト走行を行ったところ、以前に確認された2WDで右に旋回したときに感じたタイヤのロックが解消された。作業自体は一日半くらいかかったが、それ以上に、ここには書いていないが、一度デフを開けてロッカーを取り出し問題がないかを確認してもとに戻す作業をしているのだった。ギアをMaple Ridgeまで取りに行ったり、結構たいへんだったが、こうしてまたスムーズに走れるようになってよかった。また、2割程度の燃費が向上した。これは2WD時にもタイヤがロックしており、変な抵抗が生まれていたからだろうと思う。

走破性という意味では今回の組付けによってオープンキャリアになってしまい、以前よりトラクション性能は確実に劣ることになるが、これはまたいつかの機会に改良したい。